離婚
近年、離婚率は増加の一途を辿っています。平成16年6月の年金改革法の成立により、
離婚に伴う「厚生年金分割制度」が制定され、熟年離婚の更なる増加が懸念されています。
離婚は今や、誰の身にも起こり得る、身近な法的紛争とも言えるでしょう。
また、「離婚」する時は「結婚」する時の3倍のエネルギーを使うとも言われています。
離婚それ自体による精神的苦痛もさることながら、特に小さなお子さんがいる場合や、二人で築いた財産が多い場合は、
決めておくべき項目が多岐にわたることに起因します。
高田馬場法律事務所では、離婚にまつわる様々な悩みを抱えておられる方に、誠心誠意ご対応し、よりよい解決の道しるべとなるよう法的サポートをさせていただきます。
< 離婚に際して決めておくべき項目(子どもがいる場合) >
@ 親権者の指定
夫婦に未成年の子がいる場合は「親権者」を指定しなければ、離婚届は受理されません。
A 監護権者の指定
上記「親権者」を指定した上で、それとは別に監護権者(子どもを実際に監護養育する者)を指定することができます。
B 養育費
一般的には、親の収入や子どもの年齢等に応じて金額の目安を定めた算定表を参考に、子どもが成年に達するまでの毎月払いとすることが多いでしょう。
C 面会交流
あくまでも子どもの健全な成長に必要であるが故に実施されるものです。
面接交渉の回数は、毎月、2ヶ月に1回、3ヶ月に1回など、また、単に数時間会うだけではなく、宿泊することを認めたり、また、子どもとのメール、郵便等での直接の交信を認めるケースもあります。
面会交流が約束どおりに実行されることによって、養育費の履行が順調に行われるという側面があるということも無視できません。
D 財産分与
夫婦が協力して成した財産は、財産形成の貢献度によって分けることになります。
この財産分与の請求は、離婚をしてから2年以内にしなければならないので、感情的になってしまったり、離婚を急ぐあまり、財産分与をせずに離婚届けにサインしてしまうと、離婚後に相手方が財産を処分してしまい、全く財産をもらえないということにもなりかねません。
また、このような清算的な財産分与とは異なり、病気や障害がある妻の将来の生活を保障するために「扶養としての財産分与」が認められることがあります。
E 慰謝料
精神的苦痛を慰藉するという趣旨の、不法行為に基づく損害賠償ですから、離婚の原因を作った方が支払うものです。 したがって、離婚の原因が夫婦の双方にある場合には、慰謝料なしとするケースもあります。
一般的には、相手方の浮気やDV(家庭内暴力)等によって離婚を余儀なくされた場合には、慰謝料の金額も高くなる傾向にあります。また、相手方の支払い能力も重要な要素です。
F 年金分割
平成16年6月に年金改革法が成立し、平成19年4月以後の離婚からは、離婚時に妻が請求すれば、対象期間(婚姻期間中で厚生年金に加入していた期間)の報酬比例部分につき、あらかじめ夫婦間の合意により定められた(または夫婦一方の申立てにより家庭裁判所が定めた)分割割合に従って分割されることになりました。
また、平成20年4月以降のいわゆる「第三号被保険者期間」については、第三号被保険者の申請により、配偶者の報酬比例部分の2分の1について当然に分割が認められることになり、また、この「年金分割制度」により、2分の1の比例部分が日本年金機構から直接妻に支払われることになりました。
もっとも、以上の立法によっても、平成20年4月以前の第三号被保険者期間についての分割割合等は問題として残っています。
G 履行の確保
財産分与や慰謝料等の支払いが一括で行われればよいのですが、そうでない場合には、履行確保の手段を講じておく必要があります。その手段としては、合意内容について調停を申し立て調停証書にしておく方法、強制執行認諾約款付き公正証書(執行証書)にしておく方法が考えられます。
なお、民事執行法の改正により、養育費の滞納分だけでなく期限未到来分についても差し押さえることが可能となりました(民事執行法151条の2 1項3号)また、給料等の2分の1まで差し押さえることができるようになりました(民事執行法152条3項)
H 復氏
結婚によって姓を改めた者は、離婚によって当然に結婚前の姓に戻ります。但し、離婚の日から3ヶ月以内に戸籍法77条の2の定めに従って届け出ることによって、結婚していたときの姓を称することができます(婚氏続称制度)
< 離婚手続きの流れ >
1. 協議離婚
夫婦双方が合意して、離婚届に署名捺印して役所に届け出る方法。郵送でも可能です。
離婚をする場合の多くが、この話し合いによる協議離婚です。
円満離婚といきたいところですが、この協議離婚の場合でも、上記の項目を必要に応じて取り決め、強制執行認諾約款付き公正証書(執行証書)にしておいた方が、その後のトラブルを最小限に抑えることができます。
また、離婚に際して、相手方や、相手方の不倫相手に慰謝料を請求する場合には、その請求権は3年で時効消滅してしまうので、注意が必要です。
2. 調停離婚
上記のような、夫婦間で離婚についての話し合いがまとまらなかったり、話し合うこと自体ができない場合等は、家庭裁判所に離婚の調停を申し立てます。
具体的には、調停委員会(男女1人ずつの調停委員と審判官によって構成される)が仲立ちして夫婦間の離婚の合意を促すための手続きであり、相手方本人が納得しない場合には、調停委員会に解決方法を強制されるものではありません。
代理人として弁護士がついている場合には、調停委員からの事情聴取の質問に対しても、弁護士が回答できる部分は、弁護士が回答し、依頼者の負担をできるだけ軽くすることができます。
1回の離婚調停期日で解決することは少なく、一般的には5回程度は調停期日が開かれることが多く、期日間の間隔は1ヶ月程度開くことが多いです。
解決に至らず離婚調停が不調により終了することもあります。
調停において夫婦間で合意が成立し調停委員会も相当であると認める場合、成立した離婚調停は確定判決と同一の効力があります(家事事件手続法268条1項)
3. 裁判離婚
離婚調停が不調に終わった場合、管轄の家庭裁判所に離婚請求の訴え(離婚訴訟)を提起することになります。離婚訴訟のような人事訴訟には「調停前置主義」が採られているため、離婚調停を飛ばして、いきなり裁判離婚から始めることはできません。
離婚請求と同時に、親権者指定、面接交渉、財産分与、養育費等に関する審理を行うよう、付帯処分等の申立てをすることができます。離婚請求の原因である事実によって生じた損害賠償請求も離婚請求とあわせて提起できます。
ここからは「裁判」なので、訴状の送達、期日指定、答弁書の提出、第一回口頭弁論期日、争点整理手続き、準備書面の提出、証拠調べと手続きが進んでいき、一般的には一審で10ヶ月程度、複雑な事案の場合は一年以上かかることもあります。
離婚裁判の中で「訴訟上の和解による離婚」が認められています。この場合、付帯処分のうち「親権者の指定」は必ず行わなければなりませんが、財産分与、養育費等については同時に合意する必要は無く、離婚後、引き続き審理します。
裁判官が「離婚事由」があると認めれば、判決で離婚を命じます。
離婚判決に不服である場合は、控訴を提起します。
離婚裁判は離婚の最終局面なので、離婚判決が確定した場合は、たとえ夫婦の一方が納得していなくても、離婚が成立することになります。